現代ではアオリレンズと呼ばれる機能のうち、シフトと呼ばれる、主に広角レンズで発生しやすいビルの上になるほどすぼまったり、下ほどでかくなったり、モデルの足が短足になったりの補正は、アオリ装置で行うと、大掛かりな装置になりやすく、撮影時の手間・モデルとのテンポを考えると、超広角以外はパソコンのソフトのパース補正=アオリ補正とかいう機能で賄うほうが手っ取り早い時代になりました。
ただし、アオリレンズのシフト機能を用いれば、ステッチ撮影(Stitch, スティッチ、スティッチングと呼ばれることが静止画の方では多い)という複数分割撮影した画像から、超高画素の画像を生み出す撮影に役に立つ場合もあり、左側にモデルが居る場合、左にシフトした写真を撮影、その後右側にシフトさせて右側の景観を撮影。その後パノラマ作成ソフトや、PhotoshopのPhotomerge機能などで合成して、中判いらずの高画素写真を作ることもできます。モデルの全身写真でも動きにくい場所を起点として、同じように分割撮影して合成する方法もあります。
ただし、ステッチ撮影自体は、直線等が特に問題にならないなら、手持ちで普通のレンズが付いたカメラを水平・上下に平衡を保ったままに動かしていって、後からパソコンで合成するのでも、パソコンも賢くなっているので、そのあたりをうまく繋いでも、ぶっちゃけ結構使えちゃうので、アオリレンズのシフト機能は必ずしもいらない
レンズの歪曲データーがなくても、合成された写真から、うまく直線を判断して歪曲やパースを補正するソフトまである時代です ←室内で色々家具とかあるとうまくいかない場合がある。
【レビュー】建築写真のデジタルシフト補正に特化したレタッチソフト「ShiftN …
forest.watch.impress.co.jp/docs/review/514917.html
てなわけでステッチ撮影はシフトレンズを使ったほうがいい場合もあるのですが、建物のネジ曲がりとか歪曲とか細かいことを気にしない・気にならない光景なら、普通のレンズがついたカメラ自体を動かして撮影する方法もあります。シフトレンズを使った場合、三脚が好ましいという人もいますが、デジタル時代で高感度が平気で使えるので、壁などを支えにして手持ちで済ましても結構うまくいきます。
まあキヤノンの古いデジカメの時代から、デジタルでかんたん手持ちお手軽ステッチ撮影=合成大画像撮影の機能はあり、今でも解説が残っています。
「スティッチって何だろう? 」(←ステッチもスティッチも同じ意味です)
http://web.canon.jp/imaging/SOFTWARE/stitch/camera/what_is_stitch.html
というページで大昔のキヤノンの安物クラスデジカメで、シフトレンズなしにステッチ撮影する方法が解説。
http://web.canon.jp/imaging/SOFTWARE/stitch/camera/satuei.html
には、シフトレンズを使わないでステッチ撮影を行うためのアドバイスとして、
「スティッチのための撮影ヒント ★風景を撮影する場合は、なるべく近くの被写体を入れるのは避けましょう。 ★原稿を撮影する場合は、カメラを原稿面に平行に動かして距離を一定に保つよう撮影しましょう。 」(上記リンク引用)
まあシフトレンスとかを使わないでのステッチ撮影のコツは今も変わりませんね。
厳密に言えば、シフトレンズを用いる、カメラを水平に動かす、パノラマ雲台を用いて、カメラを回転させながら撮影する(カメラごとに動かす、あるいはパノラマ雲台の場合、被写体が200m位離れていればほぼ無視していいし、それ以下でもソフトの改良が進み実用の問題が出にくいことが多い)、場合、どの方法でも「状況によってはパララックス=Parallaxに注意する必要がある」場合もあります。
アオリ操作は本来はレンズを動かさず、カメラ側を傾けたり、上下左右に移動させるものです。シフトレンズを左右や上下にシフト移動した場合、大判カメラ(もしくは大判カメラやそれを模したビュータイプアオリ機構に一眼レフをアダプターで取り付けた場合)と違い、一眼レフ用のアオリレンズはレンズに三脚座がないので(アオリアダプターも一緒)、カメラを三脚につけるため、レンズを動かす形となり、厳密なParallaxに狂いが生じて、特にピントがきっちり来ていない、細かい半分ボケたような被写体で垂直かあるいは近い状態で立っているものがある場合、コンピューターで判断を誤り、合成がうまくいかない場合があります。
こんな場合ですね
http://www.outbackphoto.com/workflow/wf_48/essay.html
これの解決法として、ああおりをシフトさせた場合、プレートなどを使いカメラ本体を逆方向にシフトさせた量と同じに動かすという方法があります。
http://wiki.panotools.org/Flat_stitching_for_tilt-shift_lenses
Workflow Technique #058 Avoiding Parallax while Stitching with Shift Lenses
http://www.outbackphoto.com/workflow/wf_58/essay.html
の中で説明されてます。
パソコンソフト側の合成能力が飛躍的に上がってるので、今では無視しても良いケースが多いのですが、それでもトラブルになる場合の対策としては、
プレートか、カメラを平行に移動できる代用品を、シフトレンズをシフトした方向と逆方向で、同じ長さにカメラごと水平に移動させて撮影してパララックスの狂いからくる合成の狂いを防ぐという原理。。左側に10ミリレンズシフトさせた場合、カメラはプレート上で10ミリ、右側動かしてパララックスを防ぐ手段。
カメラを狂いなく平行に動かす専用品は、三脚+マクロスライダーとか言われるものを応用すれば、左右の移動量の目盛りが付いており、狂いなく左右に被写体に向かって平行を保って動かせます。
プロ向けはRRS – Premium macro focusing rail
http://www.reallyrightstuff.com/B150-B-Macro-focusing-rail
ただしここまで大げさでなくても中国製のちょい品質は劣りますが、それでも安い
SUNWAYFOTO サンウェイフォト SF0251 [MFR-150 マクロフォーカシングレール]←アマゾンやE-bayなどで中国から直接取り寄せればもっと安い。
http://www.yodobashi.com/product/100000001003456859/
もう少し品質は下がり、個体によっては(実用では気が付かないほどかすかに)ひん曲がってたり動作がぎこちない可能性があるますが
NEEWER カメラ用 四方向 マクロフォーカス用 スライダレール/スライダー Canon,Nikon,Sonyなどのカメラに対応 【並行輸入品】 ←購入前無名メーカーのものは移動量の目盛りがついているものを選びましょう。
あるいは三脚の雲台のクランプとカメラ側の接続をアルカスイス式にするという方法
SUNWAYFOTO クイックリリースクランプ Manfrotto / アルカスイス互換 MAC-14
など目盛りがついているので、プレートの付いたカメラを移動させる方法もありますね。
ただしいつも必要なわけではないので、どんな背景や風景だとParallaxの狂いが合成でじゃまになるかは(だいたい、まっすぐかそれに近い状態で、縦方向に立っている細かい被写体)、経験で判断することになります。なんならソフトの処理で消しちゃってもいいわけだし。
もう一つは、
レンズ本体に専用三脚座を増設してそこを起点として(カメラの方を動かすという感じで)シフトを行い、一眼レフでのParallaxの狂いを回避する方法
Canon TSE Tripod Collar – HCam & Hartblei
http://www.hartblei.de/en/canon-tse-collar.htm
Hartblei の各社対応(ニコン・キヤノン・ペンタックスなど)互換のアオリレンズの一部は、バックシフトやティルトに対応した三脚座が最初からついている高性能仕立て。もともとは旧ソ連のウクライナの製品でしたが、構造のパテントが譲渡されてドイツに販売ごと移管され、高くなった分品質は上がりました。ドイツから直接注文のみ。でも、実用には重い・高いですよ。
Hartblei 4/40 IF TS Superrotator
http://www.hartblei.de/en/sr40if.htm
HARTBLEI Digital 45mm Super-Rotator Tilt Shift Lens Small Format
http://www.hartbleilens.com/product_info.php?products_id=2
中判カメラ用(PENTAX645、67,ハッセルブラッドVマウント、マミヤ中判645レンズなど)のレンズをアダプターで使う場合、ソニー機やミラーレスであれば、中判レンズ三脚座付きのニコン用マウントアダプター(別にEOSのEFマウントでもいいけど)+キポンなどのニコン・ソニーEマウント用(もしくはキヤノン。フジミラーレス)ティルトシフトマウントアダプターと言う組み合わせでも実現できますね。
更にかんたんなのは (合成結合部分に垂直に立っている草のように細かい被写体を入れない。垂直側に目立つ被写体がない部分を合成部分に選ぶ)
http://www.outbackphoto.com/workflow/wf_48/essay.html
このケースでは下の、たてに並ぶ細かい草原や、フェンスで微妙なParallaxの狂いが生じて、ピントが合っていないこともあり合成がうまく行かなかったので、上下に分割、草原やフェンスの部分は下、建物から上を上として分割撮影するとパララックスParallaxの狂い目立ちにくく、合成ソフトも遥かに簡単に合成してくれますし、万が一ちょい変な部分があっても、修正も楽。
その他のトラブル回避のコツは、被写体より近い位置で、目立つのものを、ステッチ分割撮影の合成部分に入れないということですかね。
おまけでさらには
細かいものがボケているほどパララックスの狂いが、パソコンの判断を狂わせ合成を邪魔するので、左右にシフトして合成する場合、下側にレンズを同時にティルトさせて、ピントが確実にあっている面積を増やすということをやってる人もいます。これもかんたんな実用手法でうまくいくという人がいます。
とはいうものの
実際のところパララックスの狂いは、現在コンピューターのソフトが進歩して、どんどんうまく合成してくれるので、上に書いたような懸念は、特定の条件以外は、特に対策が必要がないとする人達も増えています。なんせ今ではパソコンの進歩で、アオリレンズすら使わないで普通のレンズで建築物分割撮影してステッチする人もいて、結構きれいに仕上がるんでから。
”Stitching with Tilt Shift Lenses to Create High Resolution Images”March 7, 2011 by Stephen
http://bayimages.net/blog/stitching-with-tilt-shift-lenses-to-create-high-resolution-images/
という記事の中で(以下引用)
”Note that technically to avoid all parallax errors you should keep the lens fixed and move the back of the camera. ・・・ However, I’ve found this to be unneccessary as the software for compositing CS5 photomerge has never had any problems with the very small amount of parallax error introduced (even when there are close objects)”気をつけることはだね、技術的には、パララックスの狂い回避には、レンズを固定したまま、後ろ側についてるカメラを動かすべきなんだ。・・・でもね、Photoshop CS5のPhotomerge機能で、ごく僅かなParallaxの狂いが(近距離の被写体でも)でトラブルになったこともないし、いちいちパララックス補正みたいなことは必要とはいえないよ。
ということなのです。まあ、かなり近距離のマクロ撮影、ブツ撮り専門の人とかで、パララックスの狂いでシビアな条件が出る可能性がある人だと、こうしたパララックスの狂いで、たまにトラブルに成るときは、この記事に書いたようにカメラ側は、レンズをシフトさせた方向と逆に動かすということを覚えておくといいでしょう。低価格ストックフォトでステッチ撮影までは、イランとは思いますけどね。ここまで今いるのは撮り下ろしの高級カタログ撮影くらいかな?
ソフトごとに結構得意不得意があるので、フォトショップ以外のパノラマソフトなども別の記事で紹介する予定です。
アオリレンズ その2 ティルト機能編 弘法は筆を選ばず レンズベビーの活用 レタッチソフト機能による代用 (おまけの応用)シフト機能を応用して中判いらずの超高画質撮影
アオリレンズ その2 ティルト機能編 レンズの光軸を動かす
アオリレンズ その一 シフト機能編
パララックス補正はソフト側の進歩でいらないという人も増えましたが、ソフトごとの優劣もあるので検証は必要。
下の記事ではPhotoshopとLightrommという、同じアドビのソフトでも能力の差があることを指摘しています。記事内の「合成の手間を省くためにできる撮影時の工夫」の項目参照。
*この記事、アオリ撮影は、本来は大判カメラやビューカメラに見られるレンズを動かすのではなく、カメラ側(受光部分)を動かすもので、一眼レフのようなレンズを動かすアオリは、変則的な使い方という説明がないので、多くの人が視差=パララックス補正を忘れちゃうケースが出てくる。この記事で視差補正で紹介してるのはアオリレンズのシフトのケースではなく、カメラを回転させて撮影するパノラマ撮影でのパララックス=視差補正のやり方。プレート使ってますね。
「Lightroom 実践力アップ講座 第38回 Lightroom CCでパノラマを使いこなせ」
解説:湯浅立志」
http://shuffle.genkosha.com/software/photoshop_navi/lightroom/8909.html
手持ちで結構できちゃうというぶっちゃけた話や、HDRを使う方法など軽く読むと参考になる。