接近して撮影するとき、レンズ本体の最短撮影距離よりさらに短い距離で撮影できるようにするアクセサリーの一つとして、クローズアップレンズと呼ばれるものがあります。
昔は交換レンズの最短撮影距離が長めのものが多かったので、それなりに重宝されることもありました。が、2015年辺りから、最短撮影距離が極めて短いキットレンズの標準ズーム、単焦点レンズなどがでてきたので、クローズアップレンズは、以前ほど必要なアイテムではなくなっています。*昔の35-70mmなどのズームは最短撮影距離が1mとか1.5mとか、今から見れば冗談のような世界でした。
またかんたんな文書のメモ代わり接写なら、今ではでかいカメラより、スマホのカメラのほうが得意ですしね(スマホ用のマクロレンズ=クローズアップレンズもありますし)。
専用の接写用レンズのマクロレンズが買えない人には、とりあえず間に合わせの役には立ちました
クローズアップレンズの描写特性と、使用上の注意
1:クローズアップレンズは、中央部の解像力はさほど悪くないが、ごく隅周辺部の解像力はどんな高級クローズアップレンズで、絞りを絞っても解像度が思ったほど上がらない まあ、周辺をトリミング前提で使えばいいですけどね。
2:相性がある テレコンバーターと同じで、組み合わせるレンズとの相性が出る場合もある。相性が悪いレンズとつければ、絞ってもあまり解像が改善したりしない。各社の説明書にはのっていないが、キヤノンのサポートと話をすると、クローズアップレンズをつけた場合は、最低二段以 上絞りを絞って撮影が基本ということ
3:テレコンと同じで、やや画質が劣化する。クローズアップレンズの大半は、樽型の歪曲収差がやや増え、フレアが増す。また周辺部になるほど画質は劣化する。文献や絵画の複写には向かない
4:メーカーは販売ページや使用説明書に書かないが、キヤノンに一度問い合わせた人の話だと、クローズアップレンズ使用時は、絞りを二段以上絞ることが推奨。
5:接写リングやマクロレンズと異なり、接写時に実効F値が暗くなる露出倍数がかからない。
6:撮影できる前後の距離に大幅な制限が出るので、最初は戸惑う
7:球面収差の増大で、ややコントラストが下がるが、これは逆にボケ味をなめらかにする、一般撮影では好ましい場合もある作用もする事がある
8:組み合わせるレンズは、望遠系のレンズのほうが色収差や歪みが少ない場合が多い。広角系のレンズはつけるだけ無駄、あるいは歪みや周辺の色にじみが出やすい傾向がある
ということで、相性が合うクローズアップレンズで、中心部に被写体を持ってくる撮影ならそこそこ使い物になる場合があるということ。
高いクローズアップレンズと、安いクローズアップレンズとの差
中国などの格安NEEWERの製品を除いた、ケンコーや、マルミ、などでの安いクローズアップレンズと、高いACクローズアップレンズと呼ばれるものの差は
1:中心部に関しては、相性の良いレンズの場合、中心部の解像はさほど変わらない。
2:安いクローズアップレンズは、周辺に色にじみなどの色収差などの劣化が、ACクローズアップレンズより出やすい
これより性能の良いアクロマート設計の、クローズアップレンズが最近、中国のNISIが発売しましたが、かなり高額で、そこまでお金を出すなら、中古の旧型マクロレンズを買ったほうがいいような気もします。
どんなレンズにクローズアップレンズはおすすめ?
2021年の現在、クローズアップレンズの使用がおすすめなのは、70-200mm, 70-300mm, 100-400mmなどの、望遠系のレンズで、最短撮影距離が1m前後までしかなく、近くに寄れないレンズです。
ケンコーのガイドでは、No1~No3の間が望遠レンズには適切とされます
標準系や、広角系では、現在発売中の多くのレンズは以前のものより最短撮影距離が短くなってきており、特に広角のレンズにいまさらクローズアップレンズを付けても、何の効果もないことも珍しくないです。また、私的見解ですが、組み合わせるレンズが、広角レンズになるほど、周辺の色にじみが強く出るような気がします。また、クローズアップレンズをつけることによる歪曲収差の増大も、広角レンズ側のほうが多く出ることがあるといえる(全部のレンズを組み合わせてみるのは不可能なので、一部サイトの見解と、自身の経験のみでしか言えないが)
ケンコーの説明書では、50mmレンズで、No.10のクローズアップレンズで、ようやくハーフマクロ以上=撮影倍率1/2~1/1.6倍になるとあるので、クローズアップレンズ一枚で等倍撮影をするなら、ケンコーのNo.10で、70~80mmレンズに付ける必要があるということですね。
なお、ケンコーのACクローズアップレンズno.2を、ニコンのAi AF80-200mm 2.8Dで、200mm位置の最短撮影距離で撮影すると、当サイトズボラ検証テストでは、だいたい0.6倍(1:1:66)前後の撮影倍率(像倍率)が稼げ、ほぼハーフマクロ以上の倍率まで稼げることになります*ピントを無限遠位置(クローズアップレンズから被写体までの距離500mm)にした場合だと、撮影倍率0.4倍
タムロンのタムロン70-210mm F/4 Di VC USD (Model A034 )は、同じACクローズアップレンズNo2を付けて、210mmでの最短撮影距離の場合、撮影倍率は0.75倍(1:1333)位ありそうです(ズボラ検証なので誤差ご勘弁)
ソニー 24-105mm F4 G OSS は105mm時に ACクローズアップレンズNo2を付けて、105mmでの最短撮影距離の場合、撮影倍率は0.45倍(1:2.1388)位ありそうです(ズボラ検証なので誤差ご勘弁)ただし、元のレンズの撮影倍率が1:3.1なので、クローズアップレンズをつければハーフマクロ近くになるとはいえ、No2はこのレンズに付けてもあまり意味はないとも言えます。 このレンズには、No3かな?
まあ、クローズアップレンズで、このくらいの倍率が稼げて、撮影目的的に、周辺の画質にうるさくないなら(書類複写や平面チャートではやや周辺劣化が気になるケースもあるが、立体物だとさほどではない)、専用のマクロレンズはあるいはいらないとも言えるかもしれませんね。
ケンコーとマルミのno1, no2とか言う規格は同じもの(キヤノンのクローズアップレンズ500Dは、ケンコーのACクローズアップNo2相当、同じくキヤノンの250Dは、ケンコーのACクローズアップレンズのNo4相当)
キヤノンのクローズアップレンズ
https://store.canon.jp/online/g/g2821A001/
この他にも、レイノックスや、中国メーカーのNISI等による超高性能クローズアップレンズも売られていますが、ケンコーのACクローズアップレンズで、一般的なおもちゃやフィギュアのイメージ的な撮影は十分だとは思います。
更に高性能のクローズアップレンズ 楽しみのオモ写くらいなら、それなりに名のしれたメーカーの一番安いやつでも間に合うことも多く(ただしレンズとの相性が悪い場合もある)、高いものでもケンコーのACクローズアップレンズで間に合うし、それい上の性能がほしければ、旧型のマクロレンズなどを安く手に入れるのが正解でしょう
「マクロレンズの代わりになる?NiSiの超高性能クローズアップレンズを試す 」デジカメウォッチ 北郷仁 2020年9月24日 07:00
https://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/special/1273925.html
NISIのクローズアップレンズは、58mm用がケンコーなどの基準でいうと、No.8.3、77mmがNo.5相当とも考えたくなりますが、NISI自体の撮影距離の説明をよく見ると、実際は58mmがno4.5くらいで、77mmがNo.3.5のようにも見えます。
77mmのNo.5相当の二枚合わせガラスの高級クローズアップレンズは、後述するように日本のマルミも作っていますが、海外でしか販売しておらず、価格も300ドルを超えるので、日本で77mmのNo4以上相当のACタイプ以上の高級クローズアップレンズがほしければ、16000~19000円前後で買えるNISIが選択肢となります。ケンコー(海外ではHOYA)は高級タイプの二枚合わせACクローズアップレンズは、No.3以上のものは、58mm以上のサイズは作っていない。
DCR-150マクロレンズ (レイノックス 吉田工業)
http://www.raynox.co.jp/japanese/dcr/dcr150/indexdcr150jp.htm
おもちゃなどのミニチュア撮影で、見本ではなくイメージショットなどする人は、クローズアップレンズを使う人は、主にNo2, No4の、クローズアップレンズを使うことが多いです。生きていないおもちゃに生命を吹き込むため、あえて、わざと周辺がやや崩れる安いタイプのクローズアップレンズを使う人も、見本ではなくイメージカットを撮影する人にはいます。
が、コインや、昆虫の撮影とかは、No5~No10のあたりが欲しくなるでしょう、。
当方は、70-200mmクラスのレンズで使うのは、No3より、やや被写体から離れての撮影でできる、ケンコーのACクローズアップレンズNo2です。絞りを2~3段しぼって、立体的なものを撮影する利用では、ケンコーのACクローズアップくらいの性能があれば特に不満は出ないと思います(組み合わせるレンズとの相性が悪い場合もありますが)
クローズアップレンズの撮影距離と、一般の交換レンズの最短距離の差
間違えやすいことですが、一般のカメラレンズで、最短撮影距離といえば、カメラの画素センサーの位置から被写体の距離のことを言います
ですが、クローズアップレンズの場合、クローズアップレンズの位置から、被写体までの距離が表示されている撮影距離で表記販売され、ワーキングディスタンスと呼ばれるレンズの先端から被写体までの距離のことをクローズアップレンズの撮影目安距離と言います。*クローズアップレンズには、焦点距離という記載欄があるので、それを見ると、クローズアップレンズを付けた状態で一番離れて撮影できる距離の目安となります
このためクローズアップレンズの撮影距離の目安の表の数字から、あなたの持っているレンズの撮影するときの長さと、カメラの画像素子までの長さを足さないと、一般に言われる最短撮影距離はわからない
望遠レンズのクローズアップレンズは、ケンコーのもので言えば、No2かNo3のどちらかを選ぶのが無難。(在庫限りの模様のキヤノン自社ブランドのクローズアップは500Dが、ケンコーのNo2相当)
「齋藤千歳・いまさらのクローズアップレンズは意外といいかも!?」 2018年5月19日 / 最終更新日 : 2018年5月19日 ぼろフォト解決シリーズとはhttps://boro-photo.com/2018/05/19/titoce-5/
上の斎藤氏は、キヤノンのクローズアップレンズ(性能的にはケンコーのACクローズアップレンズ相当)を、EF85mmにつかって見てますが、なんとか褒めようとはしてるものの、EF85mm 1.8とキヤノンのクローズアップレンズの相性はかなり悪そうで、後編をと言いながら、結局続きの記事が出ないことから、斎藤氏の試したレンズとの組み合わせでは、あまり良い結果が出なかったと推測
Close-Up Filters & Extension Tubes For Macro Photography 7 Jul 2017 12:32PM by ePHOTOzinehttps://www.ephotozine.com/article/close-up-filters—extension-tubes-for-macro-photography-31150
安いクローズアップレンズと、アクロマート仕様の高級クローズアップレンズとの比較、文書など平面的な被写体では、安いクローズアップレンズのあらが見えやすくなるが、立体物だと、高級クローズアップレンズとの描写は中心部ではさほど変わらないことを示す
HOYA PRO1 Digital Close-up No. 3 Filter Review 22 May 2015 11:16AM by ePHOTOzinehttps://www.ephotozine.com/article/hoya-pro1-digital-close-up-no–3-filter-review-27539
上は、海外ではHoyaブランドで売られているケンコーのPro1D ACクローズアップレンズNo3のレビュー。平面的な被写体ではなく、立体的な被写体でのテスト。中心部は素晴らしく、周辺も問題ない描写としている。元のレンズのボケ質も改善されるようだとも述べる。
広角レンズで利用すると樽型の歪曲収差(歪み)が強く出るが、望遠側だと、クローズアップレンズを付けたことによる歪曲歪みの増大はさほど目立たない。
HoyaのPro1D(AC)クローズアップレンズは、安いクローズアップレンズより極めて高いが、高いなりに周辺までの描写が安定していて、値段に見合った性能を持つと評者は述べる。
マルミも、ケンコーのACクローズアップレンズのような、アクロマート仕様の高級クローズアップレンズをDHG Achromat Macro 200(+5)DHG Achromat Macro 330(+3)(ケンコーのNO5とNo3相当)として製造していますが、何故か海外での販売のみで、国内ではあつかっていません。 Close up Lens Filterhttps://www.marumi-filter.co.jp/en/product/05/
Review of the Marumi DHG Achromat Macro 33 0 (+3) Close-up Lens.https://christinewiddall.co.uk/2014/07/marumi-achromat/
さんによれば、アクロマート光学だが、周辺にはやや倍率色収差がでる(安いやつよりはずっと抑えられているが)。ただしソフトの倍率色収差補正で修正できる。ニコン機なら、JPEG撮って出しの場合、電子修正データーのない、どんなレンズにでも、自動分析で倍率色収差補正がかかるので、問題ない。
ケンコーとは異なり、マルミのこの海外だけで売っているアクロマート使用の高級クローズアップレンズは、ケンコーのACクローズアップレンズのNO5相当のDHG Achromat Macro 200(+5)は、大きなレンズに付けられる77mmの大きなサイズもあることです。日本国内で販売しない理由は不明。
クローズアップレンズと組み合わせると相性の悪いレンズって何よ?
当方の場合、マルミのクローズアップレンズNo.1と、Nikon のAi AF 80-200mm 2.8Dの相性があまり良くなかったですね。絞っても、なんかモヤッとして絵にしかならなかった。*追記ハクバのMCクローズアップレンズNo1も相性が悪い
ただし、この 、Nikon のAi AF 80-200mm 2.8Dは、ケンコーのACクローズアップレンズのno2との相性は非常にいいので、組み合わせの運もありますよ。
Nikon Ai AF 80-200mm 2.8D +ケンコーAC]クローズアップレンズNo2.
旧型で最短撮影距離が長いこのレンズの活躍の場を増やしたクローズアップレンズ。200ミリでF11まで絞っています
写し込んだのは、ケンコーのクローズアップレンズに付いてきた説明書で、50mmレンズに付けた場合の撮影倍率=像倍率の目安表。**no.0.5だけは200mmレンズに付けたときの数字。使ったニコンのカメラはどんなレンズの倍率色収差(色にじみ)もカメラが自動補正することもありますが、ピンぼけの部分の色にじみも、赤の色でのにじみが、出そうなところでなんとか持ちこたえています。安いタイプだと、電子データーがないレンズでも倍率色収差=自動色にじみの補正機能が内蔵されているニコンのカメラ以外では、絞っても、特に画像中心付近から外れた箇所で、ボケた部分が完全に色がにじむことがあります(この場合も、画像編集ソフトに倍率色収差補正がある場合があるのでそれで補正できる)。
クローズアップレンズを普通のレンズにつけても、撮影倍率的には思ったほど倍率は稼げないことがわかります。やや望遠よりのレンズのほうが倍率が稼ぎやすいということ。
クローズアップレンズの使い方 – ケンコー・トキナー
https://www.kenko-tokina.co.jp/lp/close-up-lens/
クローズアップレンズを使いこなす方法 | ケンコー・トキナー
https://www.kenko-tokina.co.jp/special/product_type/lensfilter/close-up-lens.html
もう一つの国内フィルターメーカー、マルミはクローズアップレンズ(マクロレンズ)の日本国内向けラインナップを最近縮小したようです
「MACROフィルターで、マクロな世界に飛び込む。」マルミ
https://www.marumi-filter.co.jp/product/macro/