シフトレンズ(アオリレンズもしくはアオリ機能付きアクセサリー)ではなく、普通の交換レンズとパノラマ雲台、時として手持ちでPhotoshopのPhotomergeなどのパノラマソフトだけで高画質ポートレートを分割撮影から合成する方法

投稿者: 5190343667gg

アオリレンズのシフト機能を使った分割撮影で、中判がなくてもフルサイズデジタルカメラ(やもっと小さいサイズのカメラ)でモデルを分割撮影し、後から合成で一枚にすることでもスーパー高画質の写真は作れることを書いてきましたが。

アオリレンズや、パノラマ雲台とか言った機材がなくとも、人物がいる光景の写真と、人物がいない光景の写真と言った具合に、左右に分割して撮影し後からパノラマソフトとかで合成するだけでも、ぶっちゃけ結構うまくいくケースもあります(本記事後半で解説)。

でも、立っている人物を頭、胴体、足と言った具合に分割して撮影して、それを合成で1枚の写真を仕立てる場合、アオリレンズのシフト機構や、普通のレンズをつけたカメラをパノラマ雲台の載せて撮影する方法のほうが失敗は少ない。

アオリレンズのシフトを使わず、普通のレンズ+パノラマ雲台を使う場合。

パノラマ雲台を使い、プレートなどで視差=Parallaxを起こさない位置にカメラを移動させ、そこを起点にカメラを回転させ分割撮影を行い、後から1枚の写真に合成する方法です。

視差=パララックスを起こさない位置は、ノーダルポイント(Nodalpoint)と呼ばれますが、それの設定方法は、パノラマ雲台と呼ばれるものを使って探します。
以下の記事参照

「 Nodal Ninja3 MkIIを使ってノーダルポイントを見つける~業務向けの高品質な360度パノラマ写真の作り方を紹介【第3回】」
http://www.dronediy.jp/2016/01/nodal-ninja3-mkii360.html

パノラマ雲台ではなく、もう少しかんたんなノーダルポイント設定用のスライダーを用いて、ノーダルポイントを設定する解説は、前の記事でも紹介した

「Lightroom 実践力アップ講座 第38回 Lightroom CCでパノラマを使いこなせ」解説:湯浅立志」

http://shuffle.genkosha.com/software/photoshop_navi/lightroom/8909.html

の後半「合成の手間を省くためにできる撮影時の工夫」に解説が出てます

とはいっても、上に見るように正確なノーダルポイント設定が結構面倒で、きっちり調整したつもりが被写体の距離が違うと設定し直しとか、現場でぶっつけでノーダルポイント確認することも多くなります(遠距離(200メートルくらい)になるほど、適当か、まったくなくてもソフトの進歩で勝手に補正してくれるので大部分のケースでかまわないのだが、近距離でごちゃごちゃしたシーンになればなるほど、ソフトウェアで合成失敗する確率が高くなるので、撮影時にノーダルポイント設定をきちんとスべきケースが多くなり、設定が難しくなる)、忙しい撮影スケジュールだと、ほぼアバウトにノーダルポイントを決めることが多くなります。逆に事前に使うレンズのノーダルポイントがはっきりわかれば、アオリレンズのシフト機能より手っ取り早い場合もありますし、アオリレンズのステッチ(=スティッチ)で分割するやり方とは、出来上がりの合成写真は、背景の圧縮具合が違ってきます。

Creative Ways of Using Stitching (ステッチ合成の創造的なやり方)
12 Mar 2013
http://blog.reallyrightstuff.com/creative-ways-of-using-stitching/

には、モデルを頭から足まで五枚撮影し、合成した例がでてきます。

the Brenizer Method(Brenizer(http://ryanbrenizer.com/)という人が広めたのが呼び名の始まり。原理自体は19世紀から考案されていたが、アナログフィルムの時代は手間がかかりすぎて広くは使われなかった)と呼ばれる手法があります。

パノラマ雲台を応用(近距離になればなるほど手持ちは避けた方がいいが、実際のロケとかでは時間制約から手持ちで行われること多し)して、標準から中望遠レンズの開放あたりの絞りを使って、あたかも超広角の開放絞りでとったのように、しかも背景が望遠の圧縮効果で大きく見えるように見せかけるわけ(広角レンズで撮影した場合背景はもっと小さくなっちゃいます)。

人物以外の風景も大きく取り入れる場合、写真30枚ほどのステッチ分割撮影をノーダルポイントを設定したパノラマ雲台を用いて行い、広角レンズの24mm1.4とかでは絶対出せないボケの世界を演出する技法です。もちろん、中判無しでの高画素写真を作れるメリットもありますが、30枚の分割撮影をモデルが止まってくれている間に行うわけで、プロのモデルでも静止してるのは30秒位。手際よくやるのが必要。


アオリレンズを使う場合でも、同じようなボケではないですが、シフトと同時に逆ティルトをかけることで、広角レンズで絞ったまま、被写体以外をうまくボケさせることは可能です(背景は小さくなりますけど、練習がいる)。

広角アオリレンズ(Canon TS-ECanon 24mm ts-e f/3.5 II、45mm TS-E)で、ティルト機能で意図的にピントの位置をずらし被写体以外はボケるようにした例は下の記事など。
Creating Artistic Portraits Using A Tilt-Shift Lens June 19th 2016 1:00 PM

Creating Artistic Portraits Using A Tilt-Shift Lens

広角ティルトレンズの場合は、圧縮効果がないので、背景がビヨーンと間延びしますね。これはこれでいいのですけど。

また、アオリレンズならではの描写があり、下の画像のように手前のカップルと、後ろに離れた石垣にのみピントを持ってくる写真は、アオリレンズのティルト機能があってこそできる写真ですね。

http://www.slrlounge.com/wp-content/uploads/2016/06/jay-cassario-tilt-shift-4.jpg

(↑直リングでの画像インライン表示は不正利用ではないと日本の裁判所では判例がありますが、ネチケット的にインライン表示は、さけました。Youtubeみたいに向こうでインライン表示拒否設定をユーザーが選択する場合はともかく、そうでない場合は、個別に判断してます。サウザーネタみたいに相手の宣伝になり、向こうの利益にもなる、画像は小さい低画質のものと判断出来れば画像インライン表示することもあります)

 


ただし、Brenizer Methodは、撮影現場での制約から、パノラマ雲台も用いず手持ちで行うことも結構ある。モデルが止まっていられるのはせいぜい30秒ということを考えれば、3~5枚撮影ならともかく、30枚近くの分割をパノラマ雲台で行うのは逆に難しいから。視差=パララックスは被写体との距離が近ければ近いほどシビアになるので、手持ちの場合はモデルからある程度離れたほうがいいといえますね。


できるだけ失敗しない(特にパノラマ雲台を使わず手持ちでやる場合に重要)Brenizer Method(主にポートレートなどの撮影に用いられる)合成パノラマ撮影のコツは、

1)できるだけメイン被写体の前にじゃまになるものを入れない。

2)カメラを若干回転させるので背景のパースが変わりやすいので、背景をぼかして合成ソフトが多少失敗しても、ごまかしやすくしておくのが良く(あるいは単純な白バックなどを用いる)、絞りは開け気味のほうが成功率は高いようです。

3)中望遠から望遠レンズを使う フルサイズだと85mm使う人が結構いますが、失敗を減らすにはフルサイズカメラで100-200ミリくらいの望遠が最適。まあ、宣伝にヨンニッパ使ってる人もいましたがw手持ちの場合、長い望遠レンズを使うほど、視差=パララックス(Parallax)による合成失敗の確率が減る。逆に広角レンズになればなるほど三脚(トノーダルポイント修正がなされたパノラマ雲台)を使う方がいい→手持ちでは広角レンズ利用は距離が近い場合避けた方がいい

4)合成する隣のコマと、50%くらいの部分が重なり合うのが望ましい

5)PhotoshopのPhotomergeなど機能で合成する際、自動は選ばず、Cylindrical(シリンダー、円筒形)を選ぶほうがエラーが少ない(*この点はAUTO=自動の方がいいという人もいますし、フォトショップよりパノラマ専用ソフトのほうが精度が高いし、調整も楽と議論があります。自分の経験ではフォトショップより、パノラマ・ステッチソフトであるPTGUIのほうが精度も高いし、合成間違いをポイント指定で修正する機能など、レイアーをちまちま動かして修正するフォトショップより優れていると思います)

6)絞りは開放に近い絞りを選べ=あまり絞るな=明るい単焦点が望ましい(Brenizer Methodは広大な光景の中のポートレートを意識した場合に有効な撮影法なので、背景が飛ばすのが望ましいからということもありますが、手持ちの場合、どうしても起きやすい視差=パララックス=Parallaxの狂いや合成のちょっとしたエラーが、細かい背景の場合でやすいのをぼかしてごまかせる)ただし、絶対じゃないですので絞っていいいかどうかはケースバイケースで考えましょう。

7)ピントはメインのモデルなどで合わせてから、MFでピントを固定して分割撮影をする。モデルと離れたところから撮影し、もう一度モデルのところまで戻って来た時、手持ちゆえ狂ってないかもう一度ピントを確認。

8)露出は全コマ同じ露出でマニュアル固定。

 


実践方法の解説は

5 Steps to Rock the Brenizer Method. A Post By: Danielle Ness
https://digital-photography-school.com/5-steps-to-rock-the-brenizer-method/

さて、Brenizer Method実際はアオリレンズでもない普通の85mmレンズで、分割撮影して行われることが多いわけで、以下の動画に実例が手短に要領よく解説(引用ではなく、インライン表示です)、

(以下のシリーズは説明がかなり冗長ですね。)

この方法の場合、手持ちで撮影した場合、ミスでかけている部分が出るのは普通で、実際に合成素材撮影がうまくいったかどうかを確認するため、パノラマソフト=かPhotoshopを入れたノートパソコンを現場に持ち込んで、撮影後実際に合成できるかどうか確認できるようにした方がいいでしょう。

他にも手持ちで分割撮影→合成した例です

How to Make a Panoramic Portrait by Casey Cosley
March 13, 2017
http://blog.creativelive.com/creativelive-challenge-panoramic-portrait/

手持ちでさっとやっただけなので、背景の樹木が若干へんになってますが、ボケてる部分なので、目立ちませんし、言われなきゃ気が付きませんね。

 


シフトレンズの活用 ステッチ撮影 小型カメラ・低画素カメラで無理のない高画素写真を作る。一眼レフ用のアオリレンズやアダプターだとパララックスの狂いが合成の障害として生じる場合があるけど・・・

アオリレンズ その2 ティルト機能編 弘法は筆を選ばず レンズベビーの活用 レタッチソフト機能による代用 (おまけの応用)シフト機能を応用して中判いらずの超高画質撮影

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